【9.口調】

マ兵「旅券は―――はい。確かに、どうぞ入行ください」

アニ「は旅券、持ってたんだね」
「不正に入国したわけではな、ありませんから」

グランコクマともキムラスカともいえない無国籍地帯の間を、ルーク達は歩く。
ふとガイが思い出した。

ガイ「そーいやー、ルーク。日記はちゃんとつけているのか」
ルー「あぁ、メンドクセェけど、きちんとつけないと母上が心配するからな」

ジェイドは振り返りルークを見た。
ジェ「ほぉ、貴方が日記とは意外ですね」

ルー「うっせ、お前らに誘拐されてから記憶がなくなっちまって、こっちは苦労しまくってるんだからな!記憶障害が再発しないように、医者から言われてんだよ!」
ジェ「おやおや、それはそうでした」

ルークの罵倒などさらりと返し、眼鏡の位置を直した。
どうもこの態度はカンに障って仕方がない。

ミュウがご主人様のお手伝いをするのですのっと発言し、小枝を持って地面にフォニック文字を書いている。

は、ガイから二歩離れた位置で話しかけた。
それ以上近づけば、女性恐怖症が発動するからだ。

「ガイ、あの者は記憶障害といっていましたが」
ガイ「あぁ、七年前に誘拐されたから、生まれてから十年分の記憶がすっぽり抜け落ちちまってるんだ」

「そう、ですか。何も思い出せてはいないの、でしょうか」
ガイ「あぁ。・・もしかして、誘拐される前のルークに会ったことがあるのかい?」

「いや、あの者には数日前に、初めてお会いしました」
(私との日々は思い出さないほうがいいだろう。何せ死の淵に立たせたことが何度かあったしな)

ミュ「う〜んと、きょうはごしゅじんさまにぶたざるとさんじゅうはっかいいわれたですの〜」
ルー「何数えてんだよ。このブタザル!!」

ミュ「みゅぅ〜」
「39回目」

ルー「お前もいちいち数えるな!」


チャット形式【どこかで・・・】
ガイ「う〜ん」
ガイは手を顎に当て、目を瞑り天へ仰いでいた。

ジェ「どうしました。ガイ」
ガイ「あっいや。あのって女性、昨日は義手に目がいってて気がつかなかったけど、前にどっかで会ったような」

ジェ「おや、そのようなベタな誘い方では、今時の女性は捕まりませんよ」
ガイ「いや、違うって。それを言うなら旦那のほうが、彼女のこと気にかけてるように見えるけどな」

ジェ「いやですね〜。私は女性に困っているように見えますか?」
ガイ「・・いや、すまない。まったく見えない」

笑顔だったジェイドは真顔になる。
ジェ「彼女の義手には私も興味がありますが、彼女自身にはまったく興味がありません。戦力にも何にもなりませんし、はっきり言って足手纏いです」

ガイ「ははっ、きっついな〜」
ジェ「いえいえ、これでも穏やかな人だと評判なんですよぉ」

にっこり笑うジェイドだが、なにか後ろに黒いものが見えるのは気のせいだと、ガイは自分に言い聞かせた。


アニ「ルーク様♪日記には一体なんて書いてるんですかぁ?」
ルー「教えるかってーの!」

ルークは腕にしがみついたアニスを振り払う。
ガイ「そうだなぁ。俺が思うに昨日の日記は、ヴァン師匠(せんせい)が、ヴァン師匠で、ヴァン師匠だから、ヴァン師匠だった。みたいな内容だったと思うぜ」

アニ「ふむふむ、そんなに色気のない日記ならルーク様に特定の恋人はいないと見た。いよっし、もらった」
ルー「何がもらったって」

アニ「あわわわわわわわ、何でもないですぅ」
ルー「だいたい、ヴァン師匠だけじゃねぇって、キムラスカの英雄に会えるかも、とも書いたんだぜ」

へへっと、ルークは誇らしげに笑った。
アニスの目が光る。

アニ「その英雄って何ですか〜vv」
ルー「しっかたねぇなー。別名≪ケルベロス≫とも呼ばれてんだぜ。カッコイイだろ?しかも向かうところ敵無しの超〜強ぇ人で、若いのに陸軍大将!どうだ、すげーだろ!?」

アニ「はうわぁ、アニスちゃんもその方にお会いしたいですぅ」
アニ(玉の輿第三号発見vvv)

「ふんっ」
ルー「?なんだよお前、笑いやがって」

いつの間にか先頭をが歩いていた、そのため彼女がどんな顔をして笑ったか分からない。
しかし、ルークは英雄を馬鹿にされた気がした。

「失敬。世間知らずだけでなく、夢見がちなお坊ちゃまだと思っただけです」
ガイ「おっおい、。あまりルークをはやし立てるなって」

ルー「はっ、だったらお前は何か知ってんのかよ。まぁ、お前みたいな下賎な奴には、キムラスカの英雄の素晴らしさなんて分かりっこねぇってーの」
ティ「ルーク、なんていい方をするの!」

ルー「うっせー!俺の勝手だろーがっ!」
「・・・教えてやろうか、世間では何と言われているか」

の声色が変わる。
女性にしては少し低めの声をしているが、今は静かに怒りを抑えているような、そんな声だった。

ルー「おっおう、聞いてやるぜ」
は軽く首をかしげたが、こちらを振り向こうとはしない。

「よほど・・上手く言い聞かされたのだろう。逆に哀れだ。ケルベロスなどとは建前、彼女の二つの名はキムラスカの番犬。いわば、犬。人扱いなどされていない犬だ。分かるか?夢見がちなお坊ちゃま。向かうところ敵なし?味方もいないのだよ。強いなどというのは、そうだな、幼き頃から軍人として育てられれば誰でもそうなるだろう」

は、吐き捨てるように言う。
いや実際に捨てているのだ。

アニ(ガガーン、女の人なの。アニスちゃんショークってか、ルーク様が尊敬って、アニスちゃん、もしかしなくてもピンチ!?)
ルー「っつ、でも、よ。若くして陸軍大将にまでなったって」

「貴方様は貴族なのだろう。しかも公爵。彼女も貴族の養女だ。後ろ盾で成り上がったに決まっている」
は更にキムラスカの英雄に対して、軽蔑じみた言い方をする。

ルークはの背を睨む。
自分が憧れている英雄に対して、そのような扱いを受けたことが腹立たしく、悔しくてならなかった。

ルー「うっせー!誰がお前の言うことなんて信じるかよ。仮にもしそうだとしても、俺は認めないからな!後ろ盾だけじゃー、そこまで上り詰められないって父上も言ってたし、犬だろうがなんだろうがキムラスカを勝利へ導いたのには間違いないし、味方がいねぇって言うんなら・・・俺がなってやる!!」

(!)

張り詰めた空気が消えた。
は、ルークの方を向き、頭を下げた。

「少し、言い過ぎてしまったようです。大人気なかった。申し訳ない」
ルー「・・・へっ、べっ別に気にしてね〜よ。誰もそんな風に教えてくれなかったし?それにまぁ、参考・・程度にはなったし、よ」

「では最後に一つだけ」
ルー「まだあんのかよ!?」

「あまり理想を高めないほうがいい、です。現実を知ったときの絶望が目に見えます」
やはり英雄を褒めるような言い方ではないが、彼女は少し口元を緩めながら言った。

ルー「なっわっ、そっそんなの、わっ分かんね〜だろっ」
の笑顔を、はじめて見たルークは狼狽え顔を横に逸らした。

アニ(アニスちゃん、本日二回目のピーーーンチ!!もしかしてもルーク様狙い!?)




【キムラスカ領土】

国境を越え、ついにキムラスカ領土へ足を踏み入れたルーク達。

ルー「やっとキムラスカか。これでひとまず安心ってやつだな」
ガイ「おいおいルーク、家に帰るまでが『遠足』だぞ」

ルー「子ども扱いするな!」
「その言葉には、最後まで気を抜くな、という意味がある。それを理解していないところを見ると、子供だ、です」

ルー「お前は、いちいちうるせーっつーの」
めずらしく怒鳴るようにルークは言わなかった、まるで拗ねた子供のように言う。

「申し訳ない、です。どうも思ったことは口に出す、損な性格らしい、です」
ジェイドは周りに聞こえるように溜息を吐いた。

ジェ「もう無理な敬語を使うのはやめたらどうですか。聞いていて、耳障りです」
ジェイドは淡々とに言うが、目は何故か射抜くように鋭い。

ガイ「俺も、敬語は固っくるしくて好きじゃないからなぁ」
ティ「昨日も言ったけど、敬語でないほうがには合ってるわ」

アニ「アニスちゃんも、そう思いますぅ」
イオ「自然体な貴方が一番だと、僕も思います」

ミュ「みゅうもですの〜」
ルー「俺はどっちでもいいけどな〜」

「・・・そうか?では、そうさせて頂こう。実は自分でもかなり苦しいと思っていた」
ジェ「思うくらいなら、早くそうすれば良かったではありませんか?」

ガイ(おいおい、どうしてそう言い方が喧嘩腰なんだ)
「私は民間人だが、こんなしゃべり方では偉そうであろう?」

ジェ「そうですね。まるで軍人です」
「・・・そう思われもするだろう。だから敬語を使っていたのだ」

ジェ「いえ、私がそう思ったのはさきほどの話を含めてです。ルークはケルベロスを女性とは言いませんでした。それに、貴族の養女だということは初耳です。キムラスカの軍関係でなければ知らないような情報ですよ」
「そうか?女のくせにという話はよく聞くし、貴族の養女というのはキムラスカ人であれば割りと知られていることだ」

ジェイドは眼鏡に手を当てる。
ジェ「しかも心境も分かっていらっしゃるようで・・・ご本人、なのではりませんか?」

ルー「はっ?何言ってんだよ、お前」
アニ「えぇ!? がぁ?!」

ルーク達は足を止めた。
は足を止めずに進んだせいで、先頭を歩くかたちとなった。

「ご本人とはどういうことだ」
ジェイドはの後につづき、しゃべりながら

ジェ「片腕を失くし、次の戦場では元に戻っていたという話しも、貴方の義手を見れば当てはまると思いました」

槍を出し

ルー「オイッ!」
ティ「大佐?」

めがけて振り下ろした。



ガキィッ



ガイ「旦那、いくらなんでもやりすぎじゃーないかい?」
しかし、ガイの抜き身によって止められてる。

ジェ「すみません、ガイ・・それにどうやら、私の見込み違いだったようです。貴方も怖い思いをさせしまいましたね」
は腰を抜かして、地面に座りこんでいた。

顔はうつむき表情が見えない。
ジェイドは槍をしまい、歩き出す。

ガイ「まったく、旦那もたちが悪いぜ。大丈夫かい?」
返事はないが、頷きが返ってきた。

ガイは手を貸したくても貸せず、ティアに目配せする。
ティ「、行きましょう」

ティアはへ手を差し伸べた。
ルー「あいつが英雄なわけねーじゃん。戦えもしね〜のによ」

アニ「イオン様、行きましょう」
イオ「えっえぇ、そうですね。アニス」

ティ「、平気?」
「あぁ、大丈夫だ」

(あんなドンくさい攻撃で怪我をするわけにもいかんしな)
は、腰を抜かしたようにみせ、避けたのだった。

間にガイが入ってくるのは意外だと思いながら。


【チャット形式】身長1
ルー「・・・・・」
ルークは、の後ろで、自分との頭上を手をいったりきたりしながら、何度も確認していた。

「何か用か?」
ルー「うおっ、後ろに目でもあんのかよ」

「気配でなんとなく分かる。何か用か?」
ルー「べ、別に何でもねーよ!」

ルークは、ずんずんと大股での前にでて、先に進んでいった。
(?)

【チャット形式】分析3
ガイ加入後、戦闘を数回行った後。

(合流するまでの間に、少年もティアも少しは強くなったようだが、まだ太刀筋に迷いがある。それに ティアはサポート系に特化した軍人であろう。やはりガイは、昔より強くなっているな。あの時の抜き身の早さ も上々。アニスと組ませると相性がいいだろう。さて、問題はあの軍人だ。チーグルの森で見せた譜術を唱えないばかりか、全体的に能力が落ちているように見える。動きの鈍さにも拍車がかかっているようだが・・)

「・・・・」
イオ「・・何か気になることでも?」

「あの軍人、チーグルの森で会った時よりも弱く・・っと。失礼、今のは忘れてください」
イオ「いいえ、。間違っていません。彼はタルタロスで封印術(アンチフォンスロット)を受けたと聞きました。それが原因です」

「なるほど」
イオ「今は少しずつ解除していると言っていました。本当は、僕に使おうしたそうですが・・・」

「そうそう国家予算十分の一の代物を何度も使われては、資金のでどころが気になります」
イオ「・・そう、ですね」

「ダアトにそのような余裕があったとは」
(封印術(アンチフォンスロット)一つでも、ダアトにそこまでの余裕があっただろうか)

は手を口に当て考える。
イオ(封印術(アンチフォンスロット)の費用について、民間人は知ることはないはずですが・・・)

イオンもまた手を顎に当て目を伏せた。









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