【gate23:譜業兵器】


キムラスカの緋色の軍服と頭上の黒髪は、白い砂がかかっていた。

ケセドニアからザオ遺跡まで来たのにも関わらず、彼女は怪我一つ無かった。
この熱砂のなか、まるで城下で待っていたと思うほど、顔色一つ変えずに。

「何があったのだ?こんな場所まで」
ジェイドは一歩前にでて、眼鏡の位置を直した。

ジェ「ガイ、お願いします」
ガイ「俺かよ!?あんた説明する気じゃなかったのか?」

ガイは、イオンが六神将に誘拐され救出の為、ここにいる。と簡単に説明した。
「なるほど」

するとは、遺跡の出入り口に足を向けた。
ガイ「どうした?

「まだ六神将はこの中にいるのだろう?出入り口を潰しておこうと思ってな」
イオンはの前で出て、両手を左右に広げ制した。

イオ「やめてください!彼らは、僕に危害を加えたわけではなりません」
闇色の瞳が、イオンを圧迫する。

「導師イオン。現在、マルクトとキムラスカは切迫の中、和平を結ぼうとしております。それを妨害する六神将は、また我らの行く手を阻む恐れがあります。潰しておくべです」

陸艦も救援の軍隊も用意されない名ばかりの使節団。
この脆い綱渡り状態で、これ以上の横槍は危険だ。

イオンは、左右に首を振る。
イオ「彼らは・・指示に従っているだけです。皆さんには手を出さない条件で、僕を引き渡してくれました。約束は、守るべきです」

は短く唸る。
「・・・約束。ここは私が出る幕ではありませんでした。ご無礼をお許しください」

は、イオンに頭を深々と下げた。
イオンは申し訳なさそうに、眉尻を下げる。

イオ「ありがとうございます。
は頭を上げると、ザオ遺跡の出入り口を警戒した。

「しかし、予定より大分遅れてしまったな」
ルー(!)

ルー「おっ俺のせーじゃねーからな。イオンが捕まったりなんかしなきゃ、こんなことにはならなかった」
が、ぽつりともらした独り言だったが、ルークは自分が責められていると思った。

アニ「ちょっとルーク!!様〜、そんな言い方しないでくださいよ〜vV」
ティ「そうよルーク!!イオン様なくては意味がないのよ!!」

ルー「ウルセーっつーの!」
「親善大使」

ルー「なっなんだよ」
ルークは、一歩後ずさる。

「誰も親善大使のせいだとは言っていない。だが導師イオンに対して無礼な発言は、詫びるべきだ」
ルー「なっ!?うっうるせーな。・・本当のことなんだから、仕方ねーだろ・・・」

怒鳴られると、うざいと思う。
けど、こいつに言われると、横っ面を引っ叩かれた感じで腰が引く。

ルークから謝りの言葉はなかったが、悪態もつかなくなった。
アニ(怒られてやんの、ざまーみろ)
アニスは、声を殺して笑う。
遅れたのはイオンのせいだといわんばかりのルークの発言に、アニスは怒っていたが、玉の輿を狙う立場として、ルークの機嫌を損なう訳にもいかず、なんとか抑えた。

代わりにによって、たじたじになったルークがおかしてくしかたないアニスだった。

口元に手を当てて、アニスはまだ体を揺らしていた。
「アニス・タトリン曹長」

アニ「はっはいー!!」
アニスは鞭を打たれたように、背筋をピンと伸ばした。

「笑える立場ではない。仮にも導師イオンをお守りするフォンマスター・ガーディアンならば、常に導師のそばに付くべきであった」
アニ「あっうぅ、言い返せない」

アニスはがっくりとうなだれる。
イオ「アニスを責めないで下さい。僕が勝手に行動したのがいけなかったのです」

「そう思うのなら導師イオンもタトリン曹長から離れないことです。貴殿は常に六神将から狙われている身。そして、世界を左右する立場だということを、自覚して頂きたい」
イオ「・・すみません」

イオンは申し訳なさそうに目を伏せる。
「ミュウ」

ミュ「はいですの〜」
ちょこちょこと飛び跳ねて歩くミュウを、はさっと救い上げる。

「ただでさえ熱砂に近く、金属を持ち歩いている。このままでは低温火傷を起こしていたかもしれない。誰かに助力を乞うべきだった」
聖獣であろうと容赦がない。

ミュ「みゅう〜。さんごめんなさいですの〜」
水色の耳はしょんぼりと下に落ちる。

はミュウを肩にのせ、溜息と同時に瞼を落とした。
次に開いた瞬間、ギンッと音が鳴りそうな視線を、ジェイドにぶつける。

正確にはその後ろ、ジェイドの背中から金髪が見え隠れする。
「ナタリア殿下、ケセドニアについたらお話がございます」

ナタリアは、ジェイドの背後に隠れたまま。
ナタ「言いたい事があるなら、私(わたくし)に遠慮せず。おっしゃてはどうです。逃げも隠れもしませんわ!!」

ガイ「そのお姿では、説得力にかけますよ。ナタリア」
ナタ「ガイ、何か言いまして?」

ガイ「いえ、別に」
はははっと、ガイは苦笑いをする。

「言いたいことはザレッホ火山並みにありますが、いつまでもこうしているわけには参りません。使節団は、慣れぬ砂漠と六神将などの戦いで満身創痍、疲労困憊。導師イオンにいたっては、いつ倒れてもおかしくない状態です。ですから、場所を変えてから、お話しを。ナタリア殿下は・・・・素直に引き下がって頂けそうにもありません故」
ナタ「当たり前ですわ!!」

「では・・」
が、一歩前へ踏み出たとき。

ルー「だったら初めから、そーすりゃ良かったじゃん?少なくとも、あんたの小言に付き合わなきゃ、今頃ケセドニアに着いてたかもしんねーし」
ガイ(いや、それはないだろう)

「そうは思ったが、今言っておかないと意味がないと判断した。時間が経った分だけ、人は反省しない」
ルークは、へっと笑い

ルー「こんな砂漠の中、お前の説教に付き合わされて、こっちは余計な汗もかいたのにそれだけ?」
まるで謝れよというようにルークは言った。

イオ「ルーク、彼女は」
「いえ、導師イオン、親善大使の言う通りです」

は片膝を折り、頭を下げた。
「私の配慮が至らなかったばかりに、使節団に迷惑をかけしてしまった、申し訳ない」

ルー「誠意が込もってねー」
ガイ「ルーク」

は両膝、両手、額を、熱砂につけた。
「申し訳ございませんでした」

ルー「・・・あんたもプライドってもんがねーんだな。これが英雄かよ、カッコワリー」
ルークは幻滅した。

以前、ジェイドにも促すような態度を見せるとあっさりと頭を下げた。
その時は、嫌味な奴ってぐらいってしか思わなかった。

しかし、今目の前ですんなり頭を下げているのは、ただの軍人ではない。
自分が物心ついたときに語られ、憧れ尊敬しつづけた英雄だ。

英雄だと聞かされていた人は、周りから犬呼ばわりされて、カッコ悪い扱いだった。
何故か、それが許せなかったくせに言ってしまった。

ルーク自身が一番、そう思いたくないのに。
「それは今、必要ではない」

は頭を下げたまま言った。
ルー「はいはい、分かった。もーいいって」

ルークは手をひらひらと振り、そっぽを向く。
自分でさせといて、これ以上を見たくなかった。

その様に、ジェイド以外の全員が眉をひそめる。
は気にせず、さっさと立ち上がった。

「オアシスに向かう前に、簡単な治療だけ済ませておこう」
治療もろくにできていないジェイド達を見て、持っていた道具袋を担ぎ上げた。

六神将に遭遇する危険もあったので、身を隠せる場所へ移動した。
は、治療薬や包帯などを取り出して、配っていった。

ティアとアニスは受け取って、お互いを治療しあい、イオンも手伝っている。
無視するルークと警戒するナタリアの代わりに、ガイが三人分を受け取る。

「お前もだ。カーティス大佐」
ジェ「私は彼らのように子供ではありません。これぐらい自分で出来ますよ」

「皆、互いに治療しあっている。お前一人では不便だ。それに私は、手が空いている」
は、右手に白い布、左手にダアトの加護水入りの瓶を持ったまま、肩をすくめた。

ジェ「暇なら仕方がありません。甘んじて差し上げましょう」



皆の治療が終わると、は再び袋を持ち上げ。

「水と食料もあるぞ」
全員、ホッとした表情になる。

「魔物や賊は、まかせておけ。では行くか」
を先陣をきり、歩き出した。

ばさりと肩マントが、翻る。
白い砂交じりの風の中、緋色の軍服は良い目印だった。

ルー「なんだよ、あいつ。偉そうにしやがって」
ぶつぶつとルークは、文句を垂れる。

ティ「貴方より十分頼りになるわ。むしろ感謝するべきね」
ティアはルークの横を過ぎ去り、を追った。

イオ「アニス、のところへ行きたいのですが、一緒に来てくれますか?」
アニ「は〜い。イオン様〜」

ガイ「おっ?早くも言われたことを、実行してるじゃないか」

少し皆の空気が、穏やかに
ナタ(気を抜いてはいられませんわ!!)

ナタリア以外。

ナタリアは、最後尾をだらだら歩くルークの背中越しで、から目を離さなかった。
ケセドニアに一歩入った瞬間、キムラスカへ強制送還されるかもしれない。

ケセドニア北部の戦いで慰問に出かけたと言ったが、本当に《出かけた》だけなのだ。

【三年前】
 指揮官であるに、ナタリアは慰問に来たと言いに、ブリッジに出たとたん。
 ドッ

 気絶。
 目が覚めると、そこは見慣れた自室だった。

ナタ(・・・・)
アクゼリュスに着くまで、注意しなくては。


【チャット形式】ファーストネーム
ティアは、走りながらのところへ向かう。

ティ「
「・・・・」

ティ「?」
「・・・・」

ミュ「さん!ティアさんが、呼んでますのっ!!
の肩に乗っているミュウが、耳元で叫んだ。

「!何か用か?グランツ響長」
ティ「どうしたの?それに、今更ファミリーネームで呼ぶなんて」

「・・すまない。少し気が立っていた。職務中ファーストネームで呼ばれることが、なくてな。一瞬、誰のことだか分からなかった」
(んっ?職務外でも、呼ばれていなかったか)

ティアが心痛な顔つきになる。
ミュ「僕がたくさん呼ぶですの!そしたら、分からなくなくなるですの!!」

ティ「わっ私も、その・・・呼ぶわ」
ティアは、少し照れながら言った。

「・・ありがとう。ティア、ミュウ」



イオンとアニスは、たちに追いついた。
息を荒くするイオン、は歩く速度を落とす。

イオンはその気づかいに喜びつつ、息が整うとを見上げて。
イオ「。僕を叱ってくださって、ありがとうございます」

その言葉に、ティアとアニスは頭に疑問符を浮かべた。
「また、礼を言われました。不思議な方だ」

イオンは、困ったように笑う。
イオ「皆さんは僕を導師という理由で、僕自身に注意してくれる人はいません。ですから、のようにはっきり言ってくれると、嬉しいです」

「何度も言うが、節介というやつです」
イオ「いいえ。これからも、僕にいけないところがあったら、また、教えてくれますか?」

「・・・私などでよろしければ」


【チャット形式】軍服の利点
アニ「えへへ〜。カッコいいね。の軍服姿♪」
ティ「えぇ、凄く凛々しいと思うわ」

ミュ「似合ってますの!」
「そうか?そういわれたのは、はじめてだ」

イオ「やはり軍服を着ていると、何か違いますか?」
「神経が研ぎ澄まされます。それに、これを着ていると、キムラスカの領土であれば、売買に関して、何かと有利にことが運びます」

アニ「!!」
アニスの両目が、太陽よりも眩しく光った。

アニ「えっ!?何々、売買って、有利になるってどーいう事?」
「私は物資の流通面も手がけているからな、商人たちもそれはよく知っている。だから、民間人よりも買うときは安く、売るときは高くできるのだ」

アニ「えーーー!!!!今度から買い物はアニスちゃんと一緒にしようねっ!ねっ!」
アニスはの右腕をがしりと掴む。

返事はYES or DIE、激しい選択だ。

「あぁ、その時は声をかけてくれ。運が良ければ、おまけも貰えるぞ」
アニ「はうわ〜。アニスちゃんもキムラスカの軍服、ほしいー」

「ただ、よく分からんが、ぬいぐるみや小物を貰うのは、正直困る」
ティ「!!っ」

今度はティアの眼がオアシスの水面のごとく、煌きだした。
ティ「そっそれって」

アニスはティアに近づき、ちろりと半目で。
アニ「あれれ〜。ティアもと一緒に買い物に行きたいのかな〜?目的は、ぬ・い・ぐ・る・み、だったりしてー

ティ「そんな事ないわ!」
「そうか、残念だ」

ティ「あっ!ちっ違うの、。そういう意味じゃなくて・・。も〜、アニス!」
アニ「きゃ〜ティアが、怒った〜!!」

アニスが走り、ティアが後を追う。
「離れるな!!」

アニ「はーい」
ティ「ごっごめんなさい」



【チャット形式】叱られたい?

ガイ「そーいやー旦那はめずらしく何も言わなかったし、言われなかったなぁ」
ジェ「いーえー、言いたいことは全部、陸軍大将殿が言って下さいましたし、正直助かりましたよ。まぁ、それに私が同じことを言ったところで、彼女ほど効果はなかったでしょう。何も言われなかったのはガイ、貴方もではありませんか」

ガイ「確にそうだけど、なんでお咎めなしなんだろうな?」
ジェ「おや?もしや叱られたかったのですか?女性恐怖症だと言う割には、特異な趣向を持っていますね」

ガイ「おいおいおい、ちょっと待てよ。誤解を招くような発言はやめてくれって。俺はただ」
ジェ「陸軍大将殿ー!ガイが、叱られたいそうですよ」

ガイ「やっやめろって!」
イオ「ガイも僕と同じですね」

ガイ「へっ?」
ジェ「ん?」

イオ「ふふっ」
イオンは静かに微笑む。



ティアは、ふと疑問に思った。
何故、遺跡の中にいることを、は知っていたのか。

それに随分タイミング良く、あの場所で待っていた。
待っていた?

ティ「。どうして、私達がザオ遺跡にいるって分かったの?」

ティアは少し緊張する。
「オアシスで砂漠越えにしては、軽装備に徒歩といった一風変わったものたちを見かけなかったか。と聞いたら、 ダアトの神官から、ザオ遺跡に行ったと聞いてな」

ガイ(やっぱり、変人扱いか・・・)
ジェ「貴方は、ザオ遺跡の場所をご存じだったのですか?」

ジェイド達がザオ遺跡の場所を知ったのは、テントにいる行商人から曖昧な方向だけ。
にもかかわらず、は迷うことなく来た。

「ここはキムラスカ領土だぞ。知っていて当然だ」
ジェ「地図にも載っていない場所を、ですか?」

「・兵団訓練の、一つに砂漠越えがあってな。それで、見かけたのを、覚えていたまでだ」
ジェ「ほう。キムラスカでは随分、危険な訓練をされていますね〜」

「そうだな」
ガイ「でも、俺達が遺跡の中にいるのを知ってたのは?もしかしたら、出た後かもしれないだろ?」

「遺跡の出入り口付近に、印が残っていた」
ティ「印?」

「簡単な記号みたいなものだ。手傷を追った兵たちが、敵軍から逃れ、洞穴や遺跡に身を隠した場合、その印があれば探す手間もはぶける。他にも色々あるがな」
ガイ「そんなの一体誰が・・・」

・・・・・。

イオ「誰も、していないのですか?」
アニ「えっ!?って、まさか!」

ティ「六神将!?」
ガイ「待てよ、あんた、もしかして」

ジェ「あぁ、すみません。私です」
アニ・ガイ・ティ「・・・・」

「というわけだ」




【オアシス】
水辺から吹き上げる風は、冷たく心地よい。

ルーク達が、ここからザオ遺跡に向かった時は、見逃さないように探しながら進んで、遠回りもしながら二日かかった道のりが、の案内で半日程度で済んだ。
六神将との戦いも、ずっと前のように感じるほど、ルークたちは安心していた。

巨大な水色の譜石も冷たいんじゃないかと、飛びつきたくなるルーク。
オアシスで水浴びをしたいと思うティア、アニス、ナタリア。

そんな思いをぐっと我慢し、木陰で涼んでいた。
別の木陰では、とジェイドとガイが地図を広げ、オアシスからケセドニアまでのルートを確認していた。

「この道が最短ルートだが、ここは迂回したほうがよい」
ジェ「何故です?問題がなければ、このまま行きましょう」

「ケセドニアで、賊の集団がいると耳にした」
ジェ「彼らは転々と移動します。蓋然性は低いですよ」

「実際、この目で見てきた」
ジェ「はじめから、それを言いなさい」

少し寒いな。
ガイはそう思った。

ガイ「まぁまぁ」
ガイは、両手を広げ軽く上下にふり、二人を宥める。

女性恐怖症のため、ジェイド側にいるせいか、だけが宥められているように見える。
ガイ「とにかく。真っ直ぐは行けないんなら、迂回していこう。こっちでいいかい?」

地図に指を乗せ、ルートを示した。
「あぁ」

ジェ「そうですね」
はさっと地図を丸め、ジェイドはルークたちに伝えにいった。

切り替えの早さは、さすが軍人といったところか。
ガイ(あとくされないぶん。いいか)

ルートも決まり、小休憩をとることになった。
本当なら一泊していきたいところだが、遅れを巻き返さす為だ。

は、アニスやティアたちに今までの経緯を細かくを聞いていた。


【チャット形式】緊急経路
「あの炭坑跡地を通って、外に出たのか?」
アニ「うん、門の出入り口で六神将のシンクが邪魔してて、通れなかったんだよ〜。もうっホント、邪魔ばっかするんだから」

「そうか。それも遅れた原因だったのだな」
ティ「もしかして、他に外に出られる方法があったの?」

「あぁ」
ガイ「俺じゃ、そこぐらいしか思いつかなかったよ」

ガイはがっくりと首を下げる。
「何を言う、お前の思い付きが無ければ、何時まで経っても出れなかったではないか。・・周りに目が行くようになったな」

ガイ「へっ?」



アニスたちは、ザオ遺跡の出来事について話していた。

「何?六神将とは、あの特務師団アッシュも指すのか?」
ティ「えぇ。、知らなかったの?」

「あぁ」
ガイ「なんだか以外だな。あんたが、そういうのに疎いなんて」

「ダアトは敵ではないからな」
ガイ「敵って(汗)」

アニ「ディストに義手、作ってもらう時に他の六神将には会わなかったの?」
「サフィールとは個人でしか会ったことがない。あと面識があるのはヴァンだけだ。だがまずいな、カンタビレの資料までしか見なかった。鮮血のアッシュの顔も何の使い手かも分からん」

アニ「アッシュだったら、剣だよ。えっと、ルーク様と同じ流派がどうのとか」
「同じ?まさか、そんなはずはない」

ティ「本当よ。本人がそう言ってたわ」
の眉間に皺が寄る。

イオ「・・・・・」
ジェ「さて、そろそろ行きましょうか」

ジェイドは、歩き始めた。
皆も慌てて立ち上がり、オアシスを後にした。



【チャット形式】カフス その1
「カフスを返してくれ」

ジェイドは眼鏡の位置を直す。
ジェ「貴方は確か、アクゼリュスで。とおっしゃっていましたよね?ご自分で言ったことは、守るべきではありませんか?」

「もう必要ないだろう?私がいるのだから」
ジェ「いつまた、別行動を取らざるをえない事態が起きるとも限りません。先の事も考慮すべきです」

「・・そうだな。すまなかった」
ジェ「いーえー」

ガイ(これ以上、何に使う気なんだ・・・)
実はオアシスの行商人から、 のツケで物資を買ったことを内緒にされているガイだった。



相変わらず、先頭はが歩いていた。
ルークは、むすくれながら少し離れて後ろを歩く。

ガイは、楽しそうにあいつと話してる。
絶対、音機関の話だ。

あのジェイドだって、俺に厭味の一つも言ってこなくなった。
それは、嬉しいことだ。

ティアだって・・・。
ティアは、に優しく微笑みかけていた。

面白くない。

親善大使は俺なのに、選ばれたのは俺なのに、皆してあいつのところにいる。
ガイは話ながらも、ルークの様子を気にかけていた。

ずっとぶすくれているルークを見て、やばいなと思った。
いきなり「帰る!!」とか言いそうだ。

それに、このままだと・・・。
ガイは、何とか不機嫌を無くそうと、ルークの肩に手を置いた。

ガイ「ルーク、あんなに憧れてた英雄が目の前にいるのに、どうしたんだ?遺跡でのことだって、やり過ぎだぞ」
ルー「あんな態度のでけー、ムカつく奴だと思わなかったんだよ!」

ルークは、砂を蹴る。
ジェ「では、どんな方を想像していたのでしょう?噂通り、女性で黒髪です。最前線に立つ軍人ですから、か弱く繊細で可憐な虫も殺したことが無い、淑やかイメージからは、かけ離れると思いますが、まさかそのように想像していたのですか?ありえませんよ」

ガイ(だから、あんたはどうしてそう二言以上も余計なんだ・・・)
ガイは目をつぶり、少しうなだれた。

ルー(どんな、どんなって、そりゃ・・・・あれっ?そう言えば、俺、考えたことなかっ)
ジェ「まさか、何も想像せずに文句をいったわけでは、ありませんよね?」

見透かされる紅い目と、鼻につく言い方。
ルークは、内心ぎくりと冷や汗をかく。

ルー「あっ、あったりまえだろっ!あ、んなのよりも、もっとカッコ良くって、爽やかで・・師匠(せん、せい)・・師匠(せんせい)!そうだ!ヴァン師匠(せんせい)みたいだって思ってたんだよ!!」
思いつきだった。

ルー(そうだ、ヴァン師匠(せんせい)みたいな人だって、俺はずっと思ってたんだ)
思わせた。

ガイ「謡将みたいな女性っていったら・・・」
ジェイドは笑みを深くした。

ジェ「なるほど。ティアが該当しますね」
ルークの顔が、髪色のようにカッと赤くなった。

ルー「なっ、そんなんじゃねーよ!」
ティ「私が、どうかした?」

ティアがルークの顔を覗き込む。
ルー「うぉっ、なななななんでもねーよ!」

ルークはそっぽ向いて、ブスくれながら呟く。
ルー「・・・だいたい、武器だって鎌じゃねーしぃ」

それが一番の原因か、とガイは思った。
ガイ「なんだルーク、武器が鎌じゃないからって、そりゃー仕方ないだろ?今はあの杖が、にとっては戦いやすいって話じゃないか」

ティ「そうよ、ルーク。杖でも戦いに支障ないわ」
ルークは先を歩くを見た。

両腰にある杖は一般と変わらない、突起は縦長の細い空洞があるぐらいで、まだティアの持っている杖の方がマシだ。
はっきり言って、頼りない。

ルークはに向かって指をさす。
ルー「あんなん! カッコよくも」

「! 魔物だ。気をつけろ!」
その声の後に、砂の下から魔物が二匹現れた。

は砂地を蹴り飛ばし、腰にある杖を取り、先端部分を重ね合わせた。
全員(!?)

空洞だった突起の部分から鎌が出現した。
正確には《鎌の刃》と言っていい。

着地を利用して魔物の頭から鎌を突き刺し薙ぎ払うと、ルークたちのほうへ体を回転させた。
「伏せろ」

空洞部分についていた緑色の宝石が光った。
ルー「へっ?」

は鎌を薙ぎ払った。
ガイ「バカ」

の声と同時にルークは伏せていたガイに引っ張られた。
薙ぎ払った風圧が鎌の刃の形となって、ルークの頭上を通過した。

軽く髪の毛が切れた。
ルー「あっぶねー」

ギイイィィィィッ

振り返ると、そこには真っ二つになった魔物の姿があった。

が攻撃しなかったら、今頃一撃食らっていたに違いない。
ルークは生唾を飲み込み、軽く震えた。

カチッ

が鎌の柄の部分を軽く捻ると、刃は消え、二本の杖に戻った。
「安らかに眠れ」

そう言って、両腰に杖へおさめた。
ルー「何言ってんだよ。魔物なんかに・・・」

は歩みだす。
「関係ない」

ルークの顔が不機嫌に歪んだ。
ルー「関係ないってなんだよ!?俺は親善大使だぞ!?なんなんだよ、偉そうにしやがって!!」

怒鳴り声は、広い砂漠で吹き荒れる風にもっていかれた。
近くにいたガイたちは、頭を抱えため息をつく、は・・・。

(ヴァ『嫌悪されている』)
吹き荒れる風の音が、ヴァンのあの言葉と重なる。

(幻聴だ)






【もうすぐケセドニア】
オアシスを後にして一日目のことだった。
このペースで行けば、明日にはケセドニアに着くだろう、とガイが言う。

沈んでいたルークが、急に元気になった。
ルー(そうだ!!ケセドニアには師匠(せんせい)がいるんだ!!)

ルークは、を追い越し、ぐんぐん前に進んでいく。
(?)


【チャット形式】残念
ルー「〜♪〜♪」
ガイ「どうした?ルーク、急に鼻歌なんて歌いだして」

ルー「だってよ、もうすぐケセドニアだろ?ってことは、ヴァン師匠(せんせい)が」

「いないぞ」









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