【3.名前】

ミュウはチーグルの長老から一年間の追放を宣告され、その間ルークの下に仕える事となった。
巨木の中から出て、森を抜けようとする最中、ルークは声をかけた。

ルー「おいっ、おいっ!そこの黒ずくめ!」
来客「・・・私の事、ですか?」

ルークの先を進んでいた来客は、足を止めて振り返った。
ルー「お前以外に、いないだろっ」

来客「何ですか」
ルークはバツが悪そうに顔を横に向けて。

ルー「なんて呼べばいいんだよ」
来客「何がですか」

ルー「だーーっ!分かれよ!!お前のファーストネームは何て言うんだよ!!!」
来客「名乗る必要が、ありますか」

最初から最後まで、来客は同じ抑揚で答えると、再び先を進んで行った。
こればかりはルークだけではなく、ティアもイオンも驚きを隠せないでいた。

ルー「なっ」
ジェ「いや〜、振られしまいましたね」

ルー「んなんじゃねーよ!」




名乗る必要はない、と言われたルークは、腑に落ちなかった。
ルークは歩くのをやめ、立ち止まる。

ルー「やっぱ、納得いかねー」
ジェ「おや〜っ?シツコイ男は嫌われますよ」

ルー「チッゲーーって!あいつは俺らのファーストネームを知ってるのに、こっちは知らないなんてズリーだろ!?」
ティ「何か事情があるのよ」

イオ「しかし、せめて彼女のファミリーネームだけでも・・・」
来客は振り返る。

来客「私は教えてほしい、と言った覚えはな、ありません。知りたいとも思いません」
ルークが来客に掴みかかろうと一歩前に踏み出したが、思わぬ声の主に遮られてしまった。

ミュ「僕はミュウと言いますの。ご主人様には《ブタザル》と呼ばれていますの」
いつのまにかミュウは来客の足元に移動し、名乗った。

ルークは毒気を抜かれしまったのか、口をあんぐり開けている。
来客は足元にいるミュウの前でしゃがみ込む。

来客「名乗られてしまっては、こちらも名乗らざるを得ません。私は、といいます。よろしく、ミュウ、ブタザル・・・・どちらがよいでしょうか?」

ミュ「さんの好きなほうでいいですの〜」
「では、ミュウと。ブタザルではあまりにも品がない。よろしく、ミュウ」

ミュ「よろしくですの〜」
は人差し指でミュウと握手をする。

ルー「品がないだと!?」
ティ「そうね(羨ましい)」

ジェ「間違ってはいませんね」




【チャット形式】護身用
ルー「おい、お前も戦えんだろ」
「いえ、まったく」

ルー「嘘つくんじゃねーよ!」
「理由のない嘘をつくような労力は持ち合わせていません」

ルークはビシリと、の腰にぶら下げているものを指さした。
左右の腰に、一本ずつ杖のようなものをが備えてあった。

右の杖の先端は鏃が、左の先には四色の石が埋め込まれ、中は空洞になっていた。
ルー「だったらなんで、そんなもん、ぶらさげてんだよ!」

ジェ「確かに、その言い分は正しいですね」
ティ「私も気になるわ」

「・・・。コレは単なる盗賊避けにあるだけです」
ジェ「それは、魔物には通用しませんね。やはり戦いを余儀なくされたのではないですか?」

「逃げまくっていました」
(魔物がな)

ルー「ちっ、紛らわしいマネすんなっつーの!」
「すみません」

ルー「〜。・・・あんたも、イオンと一緒に下がってろよ、怪我でもしたら大変だからな」
ジェ「それはそうと、逃げる暇もなく、盗賊に襲われていたら、どうするおつもりだったのですか?」

ルークが照れながらめずらしく優しい言葉をかけてのを、流すようにジェイドが問いかけた。
「・・そこまで考えてませんでした」

ティ「貴方も、よく、今まで生きていたものね」
ティアは溜息をついた。




【チャット形式】分析1
ジェイド、ティア、ルーク戦闘後(数回)

(ふむ。赤髪の少年は、全く実践慣れしていないな。基礎はかろうじて分かっているようだが、あれでは一般兵の足元にも及ばない。あのティアという少女は譜術・・とは違うな。まぁ、少年に比べれば基礎はできているが、教本通りで判断に迷いが多い、まだまだだな。あの軍人の武器、コンタミネーション現象か?それしても、譜術に長けるあまりどうも動きは、鈍そうだ)

イオ「、戦闘も終了しました。そろそろ行きましょう」

「あぁ、すまない。・・・いや、すみません。行きましょう」
(どうも分析する癖は抜けないようだ)

イオ「・・・・・・」
イオンは顔に手をあて考え込んだ。

ルー「おーい、イオン。置いてくぞ〜」
イオ「すみません。今行きます」




チーグルの森を出る頃。

アニ「大佐〜。アニス頑張っちゃいました♪褒めて褒めて♪」
ジェ「えぇ、ありがとうございます。アニスvV」

アニ「えへっ、それほどでも〜ですぅ」
アニスの後ろには、陸上装甲艦タルタロスがあり、乗艦の準備まで終えていた。

これで私の役目も終了か、とは思った。
しかし、世の中そんなに甘くはない。

ジェ「そこの二人を捕らえなさい。原因不明のセブンスフォニムを発生させたのは、彼らです。直ちに連行せよ」
ジェイドは、ルークとティアを指差し、マルクト兵達に指示を出す。

イオ「ジェイド、乱暴なことはやめてください」
ジェ「ご安心ください。イオン様。何も殺そうというわけではありません。・・・二人がおとなしくしていれば・・の話ですがね」

ルークとティアは、おとなしくマルクト兵に連れて行かれる。
ジェ「いい子ですね〜。連行せよ」

は、その一連の騒動を眺めていた。
あまり立ち会ってはいけない現場を見てしまい、このまま帰してもらえないだろうと思った。

そうは思ったものの・・・。
もしかしたら、という結果。

「あ〜、では、私はこれで」
は気配を消して、過ぎ去ろうとしたが


チャキッ


ジェイドの槍が、の首の前で止まる。
ジェ「イオン様がこの場にいることを口外されてしまっては、こちらとしても都合が悪いです。ご同行をお願いします」

「私は誰にも口外するつもりはない、です」
ジェ「すみませ〜ん。初対面の人間の言うことを信じられないものでして・・ましてやキムラスカの人間ともなれば、尚更です」

「・・このまま帰してもらえるとは思っていませんでしたが・・・・どこで私がキムラスカの人間だと分かったのでしょうか?」
ジェ「試しに言ってみただけですよ。おとなしく・・ご同行を」

「分かりました」
まぁ、どちらにしろこの件が片付いたらキムラスカに戻るつもりであった。

(しかし・・・)

はタルタロス移動中に思考を巡らす。
最後に出てきたのは金髪の少女。

きっと、平手が・・・。
イオ「あの、すみません。僕のせいで貴方を巻き込むかたちになってしまって」

「そのようなことはありません。ところで・・貴方が、導師イオン様だったのですね」








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