【8.義手】
ジェイドはの義手を分解出来るところまで分解し、一つ一つ調べている。
特に、神経と義手を繋ぐコアというべきところを、的確にだ。
(このような無駄のない作業をするのは、あの者以外いないと思っていたが・・私は、まだまだ世界を知らな過ぎるな)
ジェ「なるほど。だいたいの仕組みは分かりました。とても特殊で貴重な素材を惜しげもなく使われていますね。かなりの膨大な費用を要したのではありませんか?」
ジェ(この音機関の構成といい・・やれやれ、諄さが滲みでてるといいますか。しかし、封印術(アンチフォンスロット)の資金の出所が気になりましたが、この義手からのようですね。それにしてもシンプルな造りにできたものです。あれのことならもっと・・・)
「詳しいことは分からない、です。ものさえあれば、私でもなんとかできるのですが」
ジェ(あぁ、なるほど)
ジェイドは納得した。彼女もこの義手の関係者、というわけだ。
あれに全て任せていたら、余計な機能を余計なくらいに付けられていたに違いない。
ジェ(あれも余計なところばかりですからねぇ)
「あとは修復作業、ですが日も暮れてきました。もう戻られたほうがいい、です」
ジェ「いえいえ、最後まで責任をもちますと言ったのは私ですよ。しかし、そうですねぇ。暗くなってしまっては作業ができません」
ふむっとジェイドは口に手をあてると、立ち上がり歩き出した。
ジェ「中へ入りましょう」
「しかし」
ジェイドはの前に義手を掲げる。
ジェ「修復するのは、私、ですよ」
「・・・・」
(どうもこの軍人のペースにのせられてしまうな)
ジェイドはを引き連れて、宿屋へ戻ってきた。
その後、修復作業を黙々と進める。
ガイは近くで、口には出さずとも子供のような目をして、その作業を見たり、ジェイドの指示により、嬉しそうに手伝ったりした。
ティアやアニス、イオンも気になるらしく、その様子を眺めていた。
唯一、ルークだけが背を向けてベットで寝転んでいる。
ジェ「さて義手は元に戻りました。この後はどうするのですか?」
「あとはこの数本のコードと腕の付け根を合わせて、最後にここを押して腕と接触させれば、終わりです」
ジェ「そうですか。分かりました」
「いや。さすがにここは私がやります」
ジェ「何を遠慮なさってるんですか。最後まで、と言いましたよね」
「遠慮ではない“ぃ”っっ!!」
の説明を無視するかのようにジェイドは義手と腕を接触させたが、同時にから、なんとも言えぬ悲痛の声があがった。
ガイ「おっおい、どうしたんだ一体」
ジェ「おや、もしや何か間違えましたか?説明通りにしましたが」
アニ「、大丈夫?」
は額を手に押し当てる
「いえ、生身と義手を繋ぐときの衝撃といいますか、それにまだ慣れていないだけ、です」
イオ「とても、痛そうに聞こえましたが・・・」
「まぁ、例えるなら両手足の生爪一気に引き剥がした感じです」
ルー「それってかなり痛ーじゃん!!」
周りがに心配の目線を向けている時、ルークがに近づいていたらしく、思わず突っ込みを入れてしまった。
「例えただけです。ところで、何でしょうか」
ルー「いや、その、何ていうかさ。さっきは、気持ち悪りーなんて言って・・・悪かったよ」
まるで親に叱られるのが怖い子供のように、ルークは渋々謝った。
「別に私は気にしてはいないと言ったはずですが」
ルー「仕方ねーだろ!あんたもヴァン師匠(せんせい)も出てった後、ティアとアニスとガイが五月蝿かったんだよ」
アニ「きゃ〜ん、ルーク様ぁ、五月蝿いだなんてヒドイですぅぅvV」
「では、自分の意志ではないとういことですね」
ルー「なっばか、そんなわけねぇだろ。おっ俺だって少しは悪かった、て思ったし・・おっ俺はもう寝るぞ」
ルークは再び寝台で寝転んでしまった。
はルークの背に向かい言う。
「自分の非を詫びることに恥じてはいけません。逆に相手から誤解を生むことにもなります」
ルー「わっ分かったよ」
「素直なことはいいことです」
ルー「だーっ!もう分かったから、それ以上何も言うなっ!」
ガイは昔を思い出した。
(??『自分の非を詫びることに恥じるな!!』)
あれは、ルークの使用人になり、その生活にもだいぶ慣れてきた頃。
中庭のベンチでルークが軍人に謝るのに対して、その軍人がルークに投げた言葉だ。
「さて、それでは私は」
は宿屋を出て行こうとするが、前をジェイドに阻まれた。
ジェ「ルークもあぁ言っていることです、貴方が出て行く理由はありませんよ」
にっこりと笑うジェイド。
「いや、しかしベッドが・・・」
ジェ「私がそこの椅子で寝ます。貴方はベッドを使ってください」
アニ「大佐ったら、紳士ですぅvV」
ジェ「私もそう思いますよ〜」
がベットを使用すると決まりかけたが
「私は・・」
(横になるのは慣れていない、というのは民間人ではありえないか)
「・・・枕が替わると眠れない性質なんです」
全員「・・・・・」
ジェイドは笑みを絶やさないまま立ち尽くす。
ジェ「ふむ・・では私が腕枕でも、というのは冗談です。しかし、貴方も我儘ですねぇ。ルークでさえ、そのような事を言いませんでしたよ。一体、今までどうやって旅をしていたのでしょうね」
腕枕発言で、ルーク達はそれぞれの反応を見せた。
女性人は顔を赤らめたり、男性人は驚きの目をジェイドに向ける。
は別の意味で目を横へ切る。
(旅、旅中は・・)
「・・旅の間は木の上で寝ていたせいか、ベッド離れをしてしまったようで」
イオンとジェイド以外の全員が(猫かよ)と内心突っ込みを入れた。
ジェイドは深く溜息をつき
ジェ「分かりました。ただし外に出る事は許しません。貴方が椅子で寝てください。いいですね」
「はい」
(ベッドで横になるよりマシだな)
夕食を終え、皆が寝静まった夜。
一つの影がへ近づく。
パシッ
は影の主の手首を掴み、目を開けた。
「何か、用か」
そこにはティアが、片手に何かを持って立っていた。
ティ「せめて毛布だけでも、と思って。でも起こしてしまったようね。ごめんなさい」
「いや、もともと余り深い眠りはできない性質なもので、気にすることはない。感謝する。ティア、さん」
はティアから毛布を貰う。
ティ「ふふ、なんだか軍人みたいね。でも何故かしら、にはその言葉遣いが似合ってるわ。それと、さんづけなんて今更しなくていいわ」
「失礼。夜だから少し気が高ぶっているようです」
ティ「おやすみなさい、」
「おやすみ」
ティアはベットへ戻る。
しばらくすると寝息が聞こえた。
は・・起きたままだった。
毛布にくるまるものの、目は開いている。
(眠れない・・・しかし、何故だろう。いつもより、落ち着いていることは確かだ)
ふとは、ジェイドのあの時の言葉を思い出した。
(ジェ『物分りのいい子は好きですよ♪』)
そんな年齢ではないと言おうとしたが、次に続く言葉に固まってしまった。
(どんなかたちであれ、人に好きだと言われたのは初めてだな。・・さて、これはなんというのだろうか)
のなかで、ざわめくこの感情は一体。
ジェ(入れ替えようと思いましたが、無理なようですね)
ジェイドはの気配から彼女が寝ていないことを察した。
が寝静まったら、自分のベッドにを寝せ、椅子で寝ようと目論んでいたが、不可能だということが分かり、眠りについた。
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