【その後宴!!!】


政宗「おうっ!!おめぇーら、飲んでっかぁ!!」
大人数「「「「「はいっ!!!筆頭!!!」」」」

大人数「「「「「「頭(かしら)も、飲んでくだせぇ!!!」」」」
政宗「ったりめーだぁ!!!!」


今宵の夜。
大部屋の障子を全て取り払い、伊達政宗、その家臣らが酒気を帯びた顔つきで、酒を飲みかわし、大声で会話をし笑い合う。

とりとめもない会話だ。
会話かも定かだ。

酒が体内にあるだけで、陽気になる。
五分咲きの桜が、より宴会を盛り上げるように咲き誇る。

(里は八分咲きぐらいだった)
部屋の中央や桜の下では、酒の入った大樽がいくつも割られ、お銚子やお猪口は床に転げ落ち、慌ただしく女中が行き交い、色とりどりの山菜、揚げ物、焼き物を取り揃える。

大部屋の周りに廊下。
大部屋の明かりと月明かり、外の篝火が合わさり、暗くはない。

はその廊下から、宴の様子を見守っていた。
その少し離れた位置に片倉が座る。

「・・・・伊達様のおそばにいなくて、よろしいのですか」
小十「宴の最中、俺がいったら、政宗様のお邪魔になる・・・・それならば、こそ、政宗様のおそばに。今宵の主役はでお前だ」

「あぁ〜〜〜、その、お酒は・・」
は天を仰ぐ。

小十「なるほど、下戸か。それで、政宗様の酌を断っていたのだな」
「えっ?・・はい、そうなんです!」

がっつり底なしで、好きで好きで仕方がない、呑んだらきっと止まらない。
あの大樽1つ余裕で飲めます。

(なんて言えない)
小十「嘘だな」

「・・・・・はい」
分かってるんなら、聞くなや。

小十郎は、小さくそれでいて長く鼻で笑った。
酒のせいだろうか。

なんだか、恥ずかしくなってくるであった。
小十「お前は、嘘が下手だな」

「その、ようです」
は下を向くと、白く小さなお猪口が視界に入った。

小十「飲めんなら、飲まねばな」
「・・・・・・・」

はそのお猪口を手せず、距離を取ろうと背を丸める。
小十「共に、政宗様をお守りする・・・・そのための、交わしだ」

(!)
小十「我らが、政宗様の背をお守りするために」

は、小十郎からのお猪口をとる。

カチン

小十郎は傍にあったお銚子で、お猪口に合わせ、陶器特有の甲高く細い音をたたせた。

小十郎は、銚子の口から酒を含み
「背は、片倉様がお守りください」

ぶほぉっ
庭に噴き出す。

軽く咽がちなった片倉の背を、が慌ててさする。
小十「・・・交わしの意味・・・」

「伊達様の背は、片倉様でなくてはなりません」
小十(?)

は酒に移る半月を見る。
「・・・・あのとき。片倉様が伊達様の背を、お離れになって甲斐の忍のもとへと行った瞬間。・・・・伊達様の空気がお張り詰めになられました」

小十「その後、すぐにが政宗様の背を・・・」
は首を横に振る。

「私が、伊達様の背にいったところで、その空気は揺ぎませんでした」
小十「・・・・」

「お言葉や、お心で、信じていらっしゃっられていたとしても・・・・やはり、体や無意識によるものは違います。真に信頼し全てを任せられるのは」
は小十郎を見る。

「片倉様、ただお1人なのです。私ではございません」
ざわりと風が吹き、桜の花びらが散り、の藍色の髪が靡く。

お猪口に、一片の桜が入った。
「お二人が背をお預けになられるならば、私が入る隙などございません」

小十「では、お前は」
「私は・・・・お二人の突破口になります」

にこっとは笑う。
「忍ですから、忍らしく、素早さを生かして道を作ります。・・・そして」

すっとは目を薄める。
「片倉様が、裏でなされているようなことも、本来は忍が行うようなことです。諜報、暗躍、偵察、情報操作、密書に・・暗殺など。これからは、片倉様の指示のもと私がします。ですから、そのぶん、伊達様の背を」

ぼかぁ

「いたぁ!!」
小十郎がの頭を殴った。

小十「勝手に話をすすめるんじゃねー。裏のことは俺がこれからもする。政宗様のために」
は頭を押さえる。

(いたい・・・)
小十「だが」

小十郎は、お銚子を再びのお猪口に近づける。
小十「・・・・餅は餅屋だ。相手が忍びだったときはぁ、頼む」

「・・・・」
は、小十郎のお銚子に自分のお猪口を

政宗「おうおうおうっ、俺抜きで、何やってんだぁ!!おめぇらぁ!!!」


がつん


間に政宗の枡が入った。
政宗「んだよぉ、ぅ、飲めんじゃねーかぁ」

政宗は、の肩に手を回して、ぐりぐりとと自分の頭を合わせる。
目は潤い、頬は朱に染まり、口からは濃い酒気がした。

(!!!)
「かかかっか片倉様、だっ伊達様は、酔って(早っ、弱っ)」

小十「酔っておられますな」
政宗は、今度は小十郎の肩に手を回す。

政宗「アァン?誰が、酔ってるだって?そーか、おめぇだな、小十郎!!」
小十「・・・はい、少々」

政宗「しっかたねぇーなぁ、だったら、こんな場所いねぇで、あっちいこーぜ、あっち!!」
政宗はびしりと親指で大部屋を指さした。

大部屋では、もう手のつけられないような大盛り上がりだった。
「いっいえ、私はあぁっ!!」

政宗はを小脇に抱えて、大部屋へ向かう。
政宗「Here we Go!」

「かっ片倉様・・・」
助けを求め片倉の背に手をのばす。

片倉は振り向きもせず、ひらひらと手をふり
小十「突破口になるんだろ?・・・せいぜぇ、盛り上げるんだな」

(そんな・・・・意味が、違う・・・・)



政宗「おらぁ、今宵の華ったぁ、こいつんことだぜっ!!!」
小脇に抱えたを自分の肩に乗せた。

(ひいぃぃ。私、忍びなのに、宴の中にいるなんて全然、忍びらしくないし、華なんてそんな大層なもんでもない)
大部屋に入って分かったが、ものすごく酒の匂いが強い。

鼻で息をせず、口ですると飲んでいるように思わせる。
(片倉様!!)

廊下に目線を向ければ。
小十「ZzzzzZzzz」

(寝てるし!!!)


夜が明けるまで宴は続いた。

宴場では、豪快に大の字になって寝るものや、ひしめき合って山積みになって寝るもの。

縁側の下で、寝るもの・・・・



ザッ
一人が伊達の庭から、遠ざかる。








「どこに、行くんですか?」
竹やぶの中で、呼び止められ振り返ると誰もいなかった。


ガッ

男は後ろから、首を捕まれた。
「・・・ちっと、用を足しに」


「貴女が、甲斐の忍に六爪のことを・・・」
「なっ、なに言ってんですかい?」

「貴方を、伊賀でみたことがあります・・・宴のときに気づきました」
男の首に力が入り、ヒヤリと汗をかく。

「宴って、あんた、独眼竜にひっ捕まって、動けなかった・・・はず・・」
「(唸り声)えぇ、まぁ・・・」


「だいたい、酔いつぶれたあいつに、抱き枕みたいに」
「別の人とっ、入れ替えましたっ!」

抜け出すのに、苦労した。



別の人→片倉小十郎
政宗「かてぇ・・・」

小十(やられた)




「俺を、殺すのか」
「いえ。里親に伝え忘れたことがあるので、伝えてください」

は男の耳元で囁く。
「里には戻らない。武器も返さない。誰がこようとも・・・殺す」

ゾクリと男の背が沫たつ。
「私と・・・春日から。と、よろしくお願いします」

は、手を離す。
男は、その瞬間に逃げ出した。


(そう、私も覚悟は、できた・・・)


(私の敵、そして奥州の敵)
は南を向いた。

(甲斐の忍、猿飛佐助)


かつての旧友にあらず。




そして二日酔い
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