【第一章:弐の卷 〜誰を信ずるか〜】

※明るく、ひょうきんな佐助が好きという方はご注意ください。
 なお、少々ながら俗物的発言が出て参りますので、その点もご注意ください。

上記の注意事項をご了承の上で、お読みください。
無理だ!!という方は、すみません。お引き換えしください。


ドゴオォォ!!!
最後の龍の頭と呼ばれる扉を、幸村が開けた。

幸村「政宗殿おおおおおぉぉぉぉーーーーーーー!!!!」
途中、伊達の家臣らや竜の石造による炎に遭遇したものの、幸村に疲れの気配はない。

幸村は走り、ひらけた場所へ出た。
周りは崖、それ以上進むことはできない。

ところどころ竹やぶが数本集い、巨大な龍の石造がある。
石造の上には。

政宗「来たな、真田幸村」
小十「政宗様・・・・」

伊達政宗と、片倉小十郎がいた。
二人は、幸村の間合いギリギリの位置に飛び降りる。

幸村は、片方の槍を政宗に向け
幸村「政宗殿!!!いざっ、尋常に!!!」

幸村「?」
片倉は、刀を構えているが、政宗は腕を組んだままだった。

よく見れば、いつも左右にある六爪がない。
幸村は政宗に向けた槍を下に降ろし。

幸村「政宗殿、刀はどうなされた・・・!!!!!もしや政宗殿!!!某と素手で戦いを望んでおられるのか!?!!!?」
違う。

政宗「Un?あーまぁ、そんなとこだ」
ということにしておこう。

武器がないから、幸村がきた。
そうでないことが、さきの発言で分かる。

が裏切ったわけではない。
偶然だ・・・おそらく。

ガシャリと幸村は武器を持ったまま、地に四つん這いになり肩を震わせた。
小十(お怒りになられたか!)

刀を使う相手ではない、そう思われたのだろうか。
幸村は地面に槍を突き刺し、立ち上がる。

幸村「おっおぉぉおおお!!!!このっっ真田幸村ぁ!!愚かでござったぁああ!!素手を望まれる政宗殿にっっ、刀を向けるなど、なんと不届きものでござろうか!!」

落涙。
だが目は炎のように燃えている、きっと錯覚だ。

幸村は、地面に槍を突き刺したまま、構えた。
幸村「いざっっ!!尋常に、勝負っ!!!!!」

政宗(マジで、やんのか・・・まぁ、仕方ねぇかぁ)
上手くごまかせ

佐助「そーんなわけないでしょー、旦那ぁ」
声のするほうを三人が向くと、佐助は器用に竹の上に立っていた。

軽く小首を傾げ、にっこり笑いながら。
佐助「どっかのだれかさんにぃ、貸し出し中ぅ・・・とかだったりして」

政宗(!?)
片倉(!!)
幸村(?)

よっと声をあげて佐助は竹から飛び降りると、幸村のところへ近づく。
佐助「旦那ぁ、これって、独眼竜を討つチャンスじゃなーい?」

チラと政宗に目線を注ぐ。

幸村「ぬっ。貸し出し中とは、真か、政宗殿・・・」
政宗は目を閉じ。

政宗「・・・悪ぃ、素手ってーのは、嘘だ。いいぜ、真田幸村。おめぇ武器もって、やるか?」
幸村「・・・・・」

幸村は地面に刺した槍をとった。
その様子に佐助は、目を細める。


【その頃の

(間に合えっ!!)
は二つ目の竜の門をくぐり、竜の口から吐き出される炎を避け進む。

この少し前のこと。
伊達政宗の屋敷に到着する手前で、伊達の直属の家臣等呼び止められ、敵襲にあったことを知った。
家臣の一人が、の背にある六爪に気つき。

家臣「急いでくだせぇ!!事情は、あっしらには分かんねーけど、今すぐ、筆頭んところへ!!」
その家臣たちも、傷を追ってぼろぼろの状態だった。

「あとで、傷の手当を。今は・・・すみません。行きます」


そして現在、政宗がいる本陣へと急ぎいる。



【同時刻、政宗】

幸村は槍を持ち、片倉が一歩前へと出た。
幸村「・・・・・」

ザッ

片倉(?!)
幸村は、二人に背を向ける。

幸村「この勝負っ、預ける!!」
幸村は竜の門へと歩き出した。

佐助「いいのぉ?独眼竜を討ったとなれば・・・・きっと、お館様も喜ぶと思うけどなぁ」
幸村はピタリと足を止め、振り向く。

幸村「このような場で、政宗殿を討ちしたとしても、お館様はお喜びになられぬっっ!!!正々堂々勝利してこそっっ、我が望み!!!行くぞ、佐助!!!」
佐助は幸村のあとにつづかず、にっこりと笑い

佐助「旦那がよくても、俺様はダメなんだよね」
姿を消し、政宗の前に姿を現し

政宗(!!)
幸村「佐助!!待て!!」

佐助「こんな機会(チャンス)、逃すわけにはいかないでしょ」
大型の手裏剣を振り下ろした。

小十「政宗様っっ!!」

キィインッ

が、小十郎によって止められ、激しいく火花が飛ぶ。

咄嗟であったにもかかわらず、小十郎の刀は怯まない。
小十郎のほうが力が、強いからだ。

だが、佐助は笑顔を崩さない。
佐助「俺が、忍者だってこと、忘れてない?」

ザッ

政宗は、小十郎に背を預け後ろを振り返る。
佐助と同じ姿の黒い影が、政宗の左右と正面から、襲いかかる。

政宗は、目をふせ軽く笑った。
諦めの表情だろうか。


佐助「あんたも・・運が悪かったね。奥州筆頭」


ギキキキィイインンッッ


佐助(!?)
小十(!!)
幸村(?)

「申し、訳ございません、伊達様、片倉様。遅く、なりました」
三方向の佐助の分身を、の蛟がVの字をつくり止めた。


政宗「イーTimingじゃねぇか。なっ?小十郎」
小十「いえ、できれば一刻(現在の30分)ほど、早く来るべきだったかと」

ドガッ

小十郎は佐助を、吹き飛ばす。
佐助はその反動を利用して、くるりと回転し着地。

佐助「おしゃべりしてる、余裕なんてないんじゃない? 3人を1人は、とくに、ねっ」
小十郎は佐助がしゃべる間に、佐助に刀を向け走り出す。

佐助は二つの手裏剣を回転させながら、小十郎に反撃。
は、佐助の分身の攻撃を蛟で受け止めている。

政宗「おいおい、partyってのは、全員で楽しむもんだろ?」
政宗は、の背にある六爪を引き抜く風圧で、左右にいた佐助の分身を吹き飛ばす。

は咄嗟に屈み、政宗は口笛をならした

政宗「Ha-ha、いいねぇ」
そのまま目の前にいる分身を切りつけ、分身は姿を消した。

佐助「さっすがぁ!でも、残りの分身はまだ死んでないよ」
小十郎を相手に余所見をしながら、闘う佐助。

政宗「言ったろ?partyってのは」
屈んでいたが蛟を引き抜き、政宗の身長を超す飛躍をし

ドッ

左右にいた佐助の分身を貫いた。
政宗「皆で楽しむもんだってな」

分身の姿は消え、は着地。
政宗との背中があわさる。

「・・・・・」
佐助「ふ〜ん。やっぱり里長の言ってたことはホントだったんだねぇ。よっっと」

佐助は高く跳躍し竜の石像に着地、小十郎との距離を十分にとった。
小十「ちっ」


「もう、伝えが・・?!」
早い、余りにも早すぎる、里を出てから一日しか経ってない。


佐助はにっこと笑い

佐助「ここにくる途中だったかな。五色米じゃなくって、里長直々の文が俺様んとこにきたよ。よっぽど、急いでたんだねぇ」
「まさか・・」

考えられる内容は一つだけ。
佐助「そっ・・・・」

佐助はうっすらと目を開ける。
佐助「あんたの暗殺命令」

は、ザッと顔を青くした。
最悪だ。

蛟の使い手が、里の反逆者が持つという伝えを佐助に知られてしまった。

佐助は竜の石像の上を軽やかに歩く。
佐助「まっ、当然じゃない?かすがの暗殺に懇願して、ほんとは蛟がほしいがために里を油断させといて」

政宗(?)
片倉(!?)
幸村(?)

「なっ」
佐助「里の皆は里長と蛟を守ろうとして半滅、あんたは里抜けて無事に奥州に取入ったって寸法」

「違う!!」


バキッ


佐助の足もとの竜の石像に罅(ひび)が入った。

佐助「違くないでしょぉ?里長は俺達忍びに嘘はつかない。だいたいさぁ、かすがは生きてて、あんたは奥州にいて、蛟がその手にある。かすがが生きていれば、暗殺に失敗したあんたは・・死んでるはず。俺様、どこか間違ってる?」

「嘘だ!!かすがの暗殺なんて懇願してない!!里長が勝手に決めて!!・・生きてるのは、かすがが・・・かすがが見逃してくれたから・・でも本当は、私を暗殺するためのものであって」
佐助「作り話でしょ、それ。なーんか、無理あるし」

「そんな!」
佐助「そんなに、蛟がほしかったのぉ?・・・それとも、俺様とかすがの、抜け者になったのがイヤだったのかなぁ」

「違う!蛟は取り返しただけだ!!奥州を守るために必要だったから!!」
佐助「取り返すって、あんたのものじゃないでしょ?同胞殺しさん」


私は、誰も殺していない!!!


ビシリと佐助の足もとにあった石像の罅が深くなった。
佐助「・・・嘘も・・そこまでくると・・笑えないよねぇ」

そういって笑ったまま、ふと足元を見た。
佐助「見てよ。ちょーうど竜の右目に罅(ひび)が入った。これじゃあ独眼竜と同じだね」

幸村「佐助!!いい加減に」
佐助「ごめーん、旦那。これ、俺様んとこの問題だから、口出さないでくれる?」

伊賀の忍びにとって里長は絶対的な存在。
直系である、服部、百血、藤林以外の忍の大半は孤児。

佐助も里親に育てられた孤児の一人だった。
嘘をついているのはだと思われても仕方がない。

追い忍への一切の情を捨てるための里長による虚言。
これならたかが迷信である伝えよりも、抜け忍に対する情がなくなる。

そして抜け忍になる追い忍は、仲が良かったものや・・・好いたものが選ばれる。
そうだ、これが里の・・・忍びのやり方だ。


佐助「あんたがどんなふうに取入ったか興味なんてないけど、なーんで奥州なの?・・あぁ、かすがみたいに、一目惚れってこと。独眼竜に?それとも竜の右目?あんたなら・・・どっちも、お相手ってやつ?」

ずっと笑顔のまま言う佐助、たが、笑っているようにはみえない。
まるで、穢らわしいものでも見ているような目だ。

「佐助・・私を信」
佐助「馴れ馴れしく、名前なんて呼ばないでよねー。・・・そんなふうに、哀れまみれの顔で取入ったの?」

その笑顔で、そんなことを言ってほしくない。
自分の知らない佐助が目の前にいる。

は、弱弱しく首を横に振る。
「違う・・・違う・・・。伊達様と片倉様は、私を」

罅の入った石像の石を足で、ボロボロと落としていく。
佐助「奥州っていうか独眼竜も、可哀そーだよねぇ。騙されちゃってさ・・・片目がないから、嘘も見抜けないのかな?」

小さく音を立てて笑う佐助。

片倉は地面に目線を落としていた。
どちらの言い分が本当なのか。

事実、目にしてきた彼女を信ずるべきである。
が、もしこの甲斐の忍びのいうことが真実だとしたら、いや・・・俺は。

は、後ろにいる政宗にも、少し先にいる小十郎にも、なんて言えばいいのか分からなかった。
いや、ただ何か話そうとすると泣きそうだった。

泣けば、また佐助に何か言われる。
『泣けばいいってもんじゃないでしょ』とか。

(伊達様も片倉様も、佐助のことを信じて、いらっしゃる・・・・のですか・・・)
無言がそう示している。

文は、自分が里から去ったした時点で、里長が佐助に送ったのだろう。


・・・・・・・。


ふつりとのなかで、黒く小さな感情が芽生える。
(・・・・・里長だけデモ、殺しておクベきだっタ)



・・・・・。


それは、どんどん
(イや、里長だケデは、ダメだ。上忍、中忍、育成中ノ子供・・・・)



・・・・。


大きくなっていく。
(ソウだ、里ノ全ての人間ヲ殺しテオケバ・・・)


・・・・・。


眼前が真っ暗になり


・・・・・・・・・。


(・・・・違う)



過去を、里のことを思い出す。
そもそも、自分が蛟に撰ばれなければ



(自分が・・・)
は蛟を・・・・。



政宗「背が、逸れてやがる」
チャキリと刀が音をたて、政宗は六本のうち、二本の刀の背を見ていた。

政宗の発言にビクリと反応する
真っ暗だった目前が、急に元の景色を映し出す。


・・・・・選ばれなければ、伊達様にお会いできなかった。
伊達様だけではない、片倉様にも、奥州の方々にも、全てだ。


政宗「・・・・こりゃぁ、New(新調し直し)にしねぇとなぁ」
(ギャーーーーーーーーーッツッッ!!!)

は声に出さず、心のうちで叫んだ。
いや、実際に顔は叫び顔だ。

ゴッ

は蛟を地面に刺し、慌てて政宗の背に向かって土下座をした。
「ももも申し訳ございません!!!せっかく貸して頂いた六爪でしたが・・・その、どうやって、手で六本持つのか分からず!・・・手は二本しかないもので、両手で一本ずつ持って、峰打ちで、ですね。それで、背を・・・」

政宗「・・なるほどね」
スラリとつかえることもせず、六本の刀を鞘に・・・・。

政宗「・・・鞘は、まだお前が持ってたな」
政宗はバツが悪そうに、振り返り、まだ土下座をしているの背には自分の鞘があった。

政宗「別に謝ることじゃねぇ。・・・ほら、血が出てるじぇねーか」
困ったように政宗は笑い、六本の刀を地面に刺す。

さきの、ゴッという鈍い音は、蛟を刺した音ではなく、が地面に額をぶつけた音だった。

良く見ると、ところどころ怪我をしている。
服も靴や裾が荒れていた。

政宗(蛟取り戻して、休まずこっちに来たな。・・・寝てねぇんじゃねーか?ったく・・無茶しやがるぜ)


佐助「はいはーい。俺様の話は、聞いてましたかー?」
肩手をあげて、目をつぶり、片目のなくなった石像の上で座る佐助。

政宗は佐助を見上げるというより、勝ち誇ったように笑い見る。
政宗「Oh!ちゃーんと聞いてたぜ。一言一句な」

佐助「で、騙されたのに、殺しもせず、お咎めもなしってわけ?・・・・そんなに、あっちの具合でも良かったのかなぁ」
馬鹿か、おめぇとでも言うように、政宗は鼻で笑う。

政宗「俺はこいつを初めから疑っちゃーいねぇし、おめぇの言ってることは信じねぇ。小十郎に、イー加減信じてもらいてーから、こいつに俺の刀を預けた。そんで、こいつは自分の武器ぃ、取り返して、戻ってきた」

政宗は座り
政宗「それで充分じゃねーか、なっ?」

土下座したままのの頭に、ぽんと手をおいた。

は、政宗を見上げ。
「私を・・・・信じて・・くだ、さる・・・」

これ以上ダメだ、泣く。
絶対に泣く。

政宗は、ぐしゃぐしゃとの髪を撫でる。
政宗「俺は、初めっから疑っちゃいねーって。なぁ、小十郎ー!」

今までの光景を小十郎は見守っていた。
自分も、なんだかんだ理由をつけて信じてないと言い聞かせていた。

頼りのない目をしているのは嘘ではないが、嘘をつくような眼ではないのは、見た時にわかった。

まぁ、あれだ。

親が子離れする瞬間、というものだ。
自分から離れると思って、情けない話だが少し悔しかったのだろう。

だが、そうではなかった。
自分の居場所は変わらない。

同じ位置に、あの者がいるだけ。

小十郎は、ふーとため息をつく。
小十「はい、政宗様」


ぐっ
は下を向き、歯を強く噛みしめ、握りこぶしをつくる。

泣く。
いや、あの日からもう泣かないと決めたんだ。

佐助「せっかく騙されてるって教えてあげたのに・・。女って、けっこーしたたかだよぉ。しかも、それなんて、と・く・に・ね♪」
ぜっっっったいに、泣かねぇ。

政宗が、ゆらりと立ち上がり
政宗「いい加減にしろよ。忍び猿」

六爪を・・・
佐助「あっれれ〜?へぇ、もしかして・・マジでそれに惚」


幸村「政宗殿ーーーーーー!!!!!」


ズガーーーーン!!!


今、地面が揺れた。
気のせいか、皆、中に少し浮いた。

佐助、、小十郎は、ぱちくりとでも音が鳴るように目を開き。
政宗は振り返った。

すぐ後ろでは、地面に額をつけて土下座する幸村。
額から血がでてる。

(・・・・頭がい骨に、ヒビ、入ったんじゃ)
額に巻いた朱色の布が血を止めてくれるだろう(たぶん)

幸村なら気合いで止めるだろう(きっと)
がばりと幸村は顔をあげた。

ほらもう止まってる(すごいすごい)
幸村「政宗殿!!佐助の失態は、某の責任!!どうか、この幸村に免じて今日のところは許してくだされっっ!!」

ズガーン!!!
地面が揺れ、パラパラと石像の小石が落ちる。

政宗「・・俺としたこが、Coolになんねぇとなぁ・・・・で、どーすんだ?」
政宗は、首を左斜め下方向に振りかえりに言う。

「わ、私ですか?」
政宗「とーぜんだろっ?おめぇが色々、あの忍び猿に言われたんだからよ」

は、政宗の足の向こうに見える幸村を除き見た。
二回も地面を揺らすほどの頭突き、ではなく土下座をしたせいで、止まった血が流れている。

ズリズリとは、四つん這いになりながら幸村に近づく。
「あっあの、私のことなら、大丈夫ですから、頭をおあげになってください。貴方も、名のある武将なら、あまり頭を下げるということは」

がばっ

幸村「誠でござるかっ!?」
すっごいキラキラした目で見ないでください。

「はい、伊達様と片倉様に信じていただけたのですから・・・・特に問題ありません」
最後の言葉は、後にいる忍びに向かっての精いっぱいの厭味だった。

幸村「この幸村、ありがたき幸せ!!感謝致すっっ!!」
正座をし、再び頭を下げた。

後ろの細く結った髪がひらりと舞い、その様は尻尾のようだ。
(なんか、狛犬みたい)

幸村「一行、失礼っ!」
そう言って、幸村はそで口を破り、の額から流れた血を拭った。

幸村「女子(おなご)の顔に、これ以上、傷跡を残してはなりませぬぞ」
はその行動にふと気がつき、自分の藍色の裾を破き、幸村の額から流れる血を拭う。

「お互い様ですぞ」
あぁ、以外にしゃべりやすいものだなとは思った。

幸村「某は女子(おなご)ではありませぬぞ?」
見りゃ分かるって。

幸村とは、拭いあった布を下げ。
幸村「さきの佐助の分身の受身、攻撃、飛躍、見事でござった。次におうたときは、手合わせ願いたいでござる」

「承知いたしござ、る、まする」
幸村「・・無理につかわなくても良いでござるよ」

「そうします」
ガクリと首を下げた。

(!)
幸村(?)

佐助が幸村の後ろに姿を表した。
佐助「旦那もあんたらも騙されちゃだめだよ。・・・・・俺みたいに・・さ」
「さす・・」

佐助「二度も同じこと言わせないでねっとぉ!!」
幸村(!)

佐助は幸村をかかえて飛躍し、大型の黒い鳥を出現させその脚に掴まる。
幸村「佐助!!某はまだ」

佐助「用が済んだら、とっとと退散。やっぱり闘う、なーんて言われたら分が悪いしねぇ」
分身を失ったことにより、佐助の体力は半減していた。

幸村「ぬぅぅう」
佐助「悪いね、旦那」

幸村はのほうを向き、大きく息を吸った。

幸村「申し遅れたー。某の名は、真田幸村と申す!そなたの名はなんと申すかー」
「・・・・私の名はっ、海の月と書いて」

は大きく息を吸い
「か






佐助「クラゲ



・・・・・


は時間が止まったかのように、動かない。
佐助はニコッと笑い手を降っている。

ガッ

は、政宗の後ろにある蛟を目にもとまらぬはやさで抜き取り、振り払う。
蛟から無数の水弾が発せられたが。

佐助「届かないよ〜。ク・ラ・ゲVv」


ビキィ(の顔がヒクリと動く)


「だから・・・」
今までに聞いたことがない、ドスのきいた声の

「その名で呼ぶなって、言ってますでしょーっ!!!」
は、走り追いかけ、水弾を飛ばし、姿が見えなくなった。


・・・・・・・・。


政宗「先に聞かれちまったなぁ。(クラゲ)ってゆーのか、あいつ」
小十「政宗様、本人が否定されていたので、違うかと。おそらく・・・」


ズドン


空からが現れた、二人の前に立て膝をつき、ぜぇぜぇと息をしながらは、二人を見上げた。
()!!・・です」





【上空移動中の幸村と佐助】

幸村「(唸り声)、佐助。・・・・里長殿というお方の言うことは真でござろうか、(くらげ)殿が、嘘をつくような者に、某には見えん」

佐助「そうだねぇ・・・旦那は、さぁ。もし、親方様が瀕死の状態で、俺様にやられたーなんて言って、俺様はやってないって言ったら・・・・・どっち信じる?」
佐助(なーんて、そんなの決まってるよねぇ)

幸村「どちらも信ずるぞ!!!」

佐助「・・・・旦那ぁ、それじゃー。矛盾しちゃうよ」
それでも佐助は嬉しそうだった。

幸村「矛盾ではござらん!!どちらも信じ、某は某で事実を見極める!!」
佐助「・・ありがと、旦那・・・・・・やっぱり、旦那には敵わないなぁ。そうそう、今日のお詫びに団子でも奢るね」

幸村「真でござるかっっ!!!佐助ぇっっ!!!!!」
頬を染め、子供のように喜びを見せる幸村。

佐助「10本までね」
幸村「ぬぅ」

幸村の少し眉尻が心なしか下がった。
佐助(事実ねぇ)









次章 再来、かすがへ
その前に おまけを読む方は その後宴へ
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【秋音より】

名前変換をされた方へ
すみません。佐助のくらげ発言で、?になったかと思われます。

海月(かいげつ)は、くらげと打って変換して頂くと【海月】とでます。